DifyとN8nの比較記事を読んだことがある人は感じているはずだが、たいていの記事は「Difyはこんな機能、n8nはこんな機能、組み合わせると最強です」で終わる。
そこで止まると判断できない。
どちらか一方を選ぶなら、結局何が違うのか。フリーランスの僕が両方を数ヶ月使って出した結論を書く。
この記事でわかること
- DifyとN8nが「何をするツール」なのかの根本的な違い
- フリーランスが選ぶべき判断基準(用途別)
- 両方使ってみてわかった、競合記事に書かれていないリアルな話

DifyとN8nは「何をするツール」なのか、まず整理する
最初に整理しておきたいのが「役割の違い」だ。
Difyは「AIアプリを作る」ツール
は、LLMを使ったアプリケーション——チャットボット・AIエージェント・RAGパイプライン——を作るためのプラットフォームだ。「Claudeや GPTをバックエンドにしたカスタムアプリを作りたい」という用途に特化している。
要するに、AIに何かをやらせる「アプリ自体」を構築するのがDifyの仕事だ。
UIはブラウザ上で完結し、ノードをつなぐビジュアルな画面でワークフローを設計できる。コードなしでチャットボットが動く——というのは確かで、実際に試してみると30分〜1時間程度でAIチャットボットのデモは動く(Dify公式サイトではSandboxプランで無料体験ができる)。
ただ、Difyで「GmailとSlackをつなぐ」ような業務自動化はできない。そういう用途じゃない。
n8nは「業務フローをつなぐ」ツール
は「ノードとノードをつなぐ」ことで業務フローを自動化するツールだ。GmailのTriggerをn8nが受け取ってSlackに通知を飛ばす、Webhookを受けてNotionにデータを書き込む——そういう「SaaS間をつなぐ自動化ハブ」として機能する。
連携できるサービスの数が1,000以上。Gmail・Slack・Notion・Google Drive・Airtable・Shopify・各種Webhook——ほとんどの業務ツールがノードとして存在する。
セルフホスト版は無料(VPS代月800〜1,500円程度が別途かかるが)。クラウド版は月20€〜(n8n公式サイトで最新料金を確認できる)。
ちなみに、n8nで「AIチャットボットを作る」こともできるにはできる。AI Agentノードという機能がある。ただ、LLMを使い込んだアプリを作るという用途だとDifyの方が機能が揃っている。
フリーランスが実際に使って感じた違い5つ
1. 学習コスト:Difyは早いが深みが狭い
Difyは直感的だ。ビジュアルなフロー設計画面で、ノードをクリックしてLLMを設定すれば動く。最初のAIチャットボットが動くまで、慣れれば1〜2日かからない。
ただ、「これ以上のことをしたくなったとき」に壁がある。特にGmail・Slack等の外部サービスとDifyを繋ごうとすると、Difyにはそもそもそういうノードが少ない。「Gmailの受信をトリガーにしてDifyのAIが処理する」ような連携は、n8n側に頼ることになる。
n8nの学習コストは少し高い。1,000以上のノードがあって最初は迷子になる。ただ、Gmail・Slack・Webhookなどよく使うノードは同じ操作感なので、3〜4本ワークフローを作ればだいたい掴める。
2. 連携の幅:n8nの方が圧倒的に広い
フリーランスの日常業務——「クライアントからのメールをSlackに飛ばしたい」「フォーム回答をGoogleスプレッドシートに転記したい」「Webhookで請求書データを受け取ってNotionに記録したい」——これは全部n8nの仕事だ。
Difyではできない。
GmailやSlackという日常ツールと繋ぐなら、n8nかMake・Zapierが選択肢になる。Difyを選ぶ理由がない。
3. AIの活用度合い:DifyはLLMを使い込める
「AIに文章を生成させたい」「社内ドキュメントをRAGで検索できるチャットボットを作りたい」「LLMが判断して複数のAPIを呼び出すエージェントを組みたい」——これはDifyの得意領域だ。
n8nにもAI Agentノードはある。OpenAI・Anthropic・Gemini等を呼べる。ただ、DifyのRAGパイプラインやMCP統合のような「AIを使い込む」機能は、Difyの方が充実している。
4. セルフホスト・料金:どちらも無料でいける
両方ともオープンソース・セルフホスト可。
- n8n:セルフホストは完全無料。VPS代月800〜1,500円程度で実行数無制限
- Dify:クラウド版のSandboxプランは月200メッセージクレジット・無料。セルフホストも可能
どちらも「試しに使う」は無料で始められる。本格運用するとn8nはVPS代のみ、DifyはProfessionalプランが月$59〜。フリーランスがDifyに月$59を払うなら、相当AIアプリ開発に軸足を置いている必要がある。
5. 向いているユースケースが完全に違う
結局ここが一番大事だ。
| 用途 | DifyかN8nか |
|---|---|
| AIチャットボットを作りたい | Dify |
| RAGで社内文書検索アプリを作りたい | Dify |
| LLMエージェントを構築したい | Dify |
| GmailやSlackを自動化したい | n8n |
| フォームデータをスプレッドシートに転記 | n8n |
| Webhookで受け取ったデータを複数サービスに転送 | n8n |
| AIを使いつつ業務フローも自動化したい | 両方(連携させる) |

「Difyを使う」と決める判断基準
以下のどれかに当てはまるなら、Difyを選ぶ理由がある。
- 社内向けAIチャットボットや問い合わせ対応ボットを作りたい
- 自分専用のRAGベースの情報検索アプリを作りたい
- LLMに「考えながら動く」エージェントを構築したい
- コードを書かずにAIアプリをデモとして見せたい
ただし、GmailやSlackなど既存の業務ツールとの連携が主目的なら、Difyは適していない。外部SaaS連携はn8nに任せてDifyはAI処理に集中させるのが現実的な使い方だ。
「n8nを使う」と決める判断基準
以下のどれかに当てはまるなら、n8nを選ぶ理由がある。
- GmailやSlackなど日常業務ツールの自動化がメイン
- 月のランニングコストを最小に抑えたい(セルフホストならVPS代のみ)
- 複数のSaaSを繋いだデータ連携・自動転記がしたい
- プログラミングは避けたいが、ある程度の設定は苦ではない
AIを活用したいならAI Agentノードも使える。ただ、DifyのようにガッツリとしたAIアプリを作るのは向いていない。
初めてDifyを触ったとき、僕が思い違いをしていたこと
少し踏み込んで書く。
Difyを最初に試したとき、「これでGmailのメールをAIが仕分けしてくれるやつが作れるんだ」と思っていた。結果から言うと、それは見当違いだった。
DifyにはGmailのノードがない。SlackのノードもNotionのノードも、基本的にはない。Difyの画面を1時間以上触って「あれ、外部ツールとの連携ってどこ?」となって調べて、ようやく理解した。Difyは「LLMを使ったアプリを作るツール」であって、「業務を自動化するハブ」ではない。役割が違う。
その後、同じ連携をn8nで15分で作った。GmailのTriggerノードをセットして、OpenAI APIのノードで分類させて、Slackのアクションノードで通知——それだけ。
この体験があってから、Difyは「AIアプリ開発」、n8nは「業務自動化」と頭の中で完全に別のカテゴリに分けた。両方を試していなかったらずっと混同していたと思う。
料金で比較すると、フリーランスには何が現実的か
費用の話も整理しておく。
Difyのクラウド版Sandboxプランは無料だが、月200メッセージクレジットの制限がある。本格的に使い込むならProfessionalプランが月$59(年払いで$49/月相当)。フリーランスとしてDifyに月$59を払うなら、それ相応のAIアプリを作って収益に繋げる目線が必要だ。
n8nのセルフホストは無料。VPS(さくらVPSのスタンダードプラン等)を使えば月800〜1,500円程度で実行数無制限で動かせる。クラウド版を使うなら月20€〜(年払い)。n8nの具体的な料金比較はn8n vs Zapier 料金比較の記事で詳しく書いたので参考にしてほしい。
で、現実的にはという話だが、僕はn8nをセルフホストで月4本のワークフローを動かしていて、月のコストはVPS代800円程度だ(他のサービスとサーバーを共用している)。DifyはSandboxの無料プランで使っている。
フリーランスが「料金コストを最小化しながら自動化・AI活用したい」という優先順位なら、n8nセルフホスト + Dify無料プランの組み合わせが一番現実的な入り口だと思う。Difyの料金プラン詳細は公式の価格ページで確認できる(2026年4月時点の情報)。
両方使う、という選択肢もある
実は「n8n + Dify」という連携スタックを使うパターンも増えている。
例えば、n8nがGmailのメールを受け取って、Difyが用意したAIにそのメールを渡して要約・分類させて、n8nがSlackに結果を投げる——というようなフロー。「業務の入出力はn8n、AIの処理はDify」という役割分担だ。
フリーランスがここまで組むには少し学習コストがかかるが、両方の強みを活かせる。ただし、「まずどちらかを使いこなす」のが先だ。両方同時に始めると方向性がブレる。
Difyのここが惜しかった、n8nのここが面倒だった
フェアに書くなら、それぞれの「惜しいところ」も書いておきたい。
Difyで惜しかったこと:
外部SaaS連携が弱い、というのは前述した通り。それ以外に感じたのは「デプロイのハードルが意外と高い」という点だ。Difyで作ったAIアプリを「外部に公開する」には、Difyのクラウド版かセルフホストが必要で、セルフホストはDockerの知識が要る。「ブラウザでノーコードで作れる」のは本当だが、「外部に公開してクライアントに使ってもらう」となると途端にハードルが上がる。
あと、Sandboxの無料プランは月200クレジットしかない。開発中のテスト実行で消費するので、本格的な開発をするとすぐ上限になる。
n8nで面倒だったこと:
セルフホストのセットアップが最初は時間がかかる。NginxのリバースプロキシとSSL証明書の設定で、初回は半日詰まった(詳しくはn8nセルフホストの記事に書いた)。
ノードの数が多すぎて、「このSaaSはどのノードを使うのか」を探す時間が地味にかかる。慣れれば検索一発で出てくるが、最初の数本は「あのノードはどこ?」と探し回る時間が発生する。
あと、n8nはエラーのデバッグが少し難しい。実行ログを辿れるのは良いが、「このステップで失敗した原因が何か」をピンポイントで把握するまでに学習コストがある。
どちらも「惜しいところ」はある。それを踏まえた上で、自分の用途に合っている方を選ぶのが正解だ。
まとめ:フリーランスには結局どっちが向いているか
正直なところ、「フリーランスが最初に入るなら n8n」だと思っている。
理由は単純で、Gmail・Slack・Webhook・スプレッドシートなど、日常業務と繋がっているツールが多いから。業務効率化という目的でツールを選ぶなら、n8nの方が「すぐに効果が出る」場面が多い。
Difyを選ぶのは「AIアプリ開発に集中したい」というときだ。クライアントに見せるプロトタイプを作る、自分専用のAIツールを組む——そういう用途に絞れば、Difyは強力だ。
まあ、どちらも無料から試せる。最初の1〜2本は実際に手を動かして確かめるのが一番早い。
合わせて読みたい
– Difyの使い方入門:ノーコードでAIチャットボットを作る最初の一歩
– n8n の使い方入門:インストールから最初のワークフロー作成まで図解
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